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建設業者の役員変更をする際は十分にご注意ください!


皆さんお疲れ様です。

行政書士の谷口博士です。

このブログでは私が取り扱った事例を中心に読者の方にとって、少しでも有益な情報の提供と注意喚起を心がけてまいります。

さて、記念すべき第一回は建設業許可にまつわる事例です。

第一回

建設業と役員変更登記 

これは、先々週の話ですが、福岡県知事許可を受けたとある建設業者から受けた電話から始まった事件です。

以下は、お客様とのやり取りの一部です。

お客さま「5年前に福岡県知事の建設業許可を受け、今年が更新なのですが、有効期限が今月末です。取引先から30日前には更新をしていないダメだと聞いたのですが更新は出来ますか?」

お客様は女性です。電話口から不安が伝わってきます。

谷口「大丈夫です。確かに規定では90日前から30日前までに更新の申請が必要となっていますが、今のところ福岡県に関しては、許可が切れていない限りは受付をしてくれますよ」

お客様「そうなんですね!?安心しました!申請が難しいので更新手続きをお願いできますか?」

谷口「わかりました。では、FAXで必要書類をご案内いたします。そろった段階でお客様の事務所に伺います。急ぎの仕事になりますので出来れば、明日までに連絡をお願いします」

この後、必要書類一覧をFAXで送信し、さっそく準備ができたということで、翌日に面談の流れとなりました。

実務をやっていると意外と多いのがこの様なケースです。

毎年数回は、許可の有効期限が切れる直前、あるいは切れた後で相談をされます。

まともな行政書士が許可に携わっていれば、毎年度ごとの決算の変更届と5年ごとの更新手続きに関しては、ご案内をするので、許可が切れてしまう心配は、まずありません。しかし、以前担当した行政書士が高齢により廃業した等の理由により、許可が切れる直前に気がついたというケースは決して少なくはないのです。

今回も以前依頼した行政書士と連絡がつかなくなったとのこと。

念のために県庁建築指導課建設業係に確認の電話を入れて、申請のための段取りを組みます。各都道府県毎に取扱いは違いますが、少なくとも福岡県では30日を切ったからといって、許可が失効していない限り、申請を受け付けてくれないといったことはありません。

許可制度は、何も規制だけが目的ではありません。役所の許可を得ることで顧客からの信頼を得ることにも繋がります。健全な建設業者の仕事を守っている側面もあります。

ですから、許可が切れていない以上は、建設業者の仕事ができなくなるような事態は県職員も極力避けたいと考えているはずです。

もちろん受け付けてもらうのが当たり前ではありませんが、あらかじめ担当者としっかり打ち合わせを行っておけば、寛大な措置が期待できます。

今回は20日以上の余裕があります。許可申請に必要な書類を取り揃える時間は打ち合わせの時間を入れても十分です。身分証明書が発行されるまでに1週間以上の時間を要する地域もありますが、受任したらすぐに郵送請求をすれば間に合います。

と、ここですんなりと話が終わっては、わざわざ記事にする必要がありませんね。

このまま、めでたしめでたしであれば何の注意喚起にもなりません。

今日の本題はここからです!!

翌朝、法人の登記簿を取得した私は記載事項から大変嫌な気配を感じ取りました。

登記簿を見ると半年ほど前に、商号の変更と代表取締役が交代していました。さらに代表取締役は取締役を辞任しています。現在は代表取締役だけが経営者として残っています。

跡継ぎの息子に経営を譲る。これ自体はよくある話です。

しかし、建設業者の方はちょっと待ってください!下手をすると取り返しがつかないことになりかねません!

ご存知かもしれませんが、建設業許可には、大きく分けて5つの要件があります。

 ① 経営業務の管理責任者がいること

   →5年又は6年以上の経営経験が必要

 ② 専任の技術者がいること

   →資格や実務経験などが必要

 ③ 財産的基礎

   →一般建設業では500万円以上の資金

 ④ 誠実性

 ⑤ 欠格要件に該当しないこと

このうち、④と⑤には殆どの場合問題がありませんし、多くの場合ヒヤリングの段階で判明します。もちろん過去に何かしらの処分を受けていないかは国土交通省のデータベースで調査はしますが、ここで問題が発見されたことは、私の運が良いのかあまり見たことはありません。たいていの場合①~③のどれかが問題となります。今回は更新ですので、過去5年間許可を受けて継続して営業した実績があるため、財産的基礎は担保されています。

今回懸念されるのは①と②です。

特に経営業務の管理責任者は法人の業務を執行する常勤の役員でなくてはなりません。株式会社の場合、経営業務の管理責任者を取締役から外した時点で建設業の許可要件を失い、許可の効力もなくなってしまいます。

一応、退職や死亡から2週間以内に補充して届出をすれば存続できますが、辞任から既に半年を経過しています。また、登記簿上には息子さんと思われる取締役だけが代表として残っていますが、少なくともこの会社での経営経験は半年だけです。とても5年には足りません。他の法人での役員経験や個人事業主としての経営経験がない限り、この会社は、もはや許可要件を失います。

また、経営業務の管理責任者と専任技術者は常勤性が求められるため社会保険への加入義務が生じます。専任技術者は必ずしも取締役である必要はありませんが、常勤の従業員である以上は社会保険への加入義務が生じます。取締役を辞任した後に従業員として会社に残り、社会保険に加入している可能性には経験からいってあまり期待はできません。

これはあくまで登記簿上からの想像ではありますが、面談前から頭を悩ませます。

午前11時、お客様の事務所を訪ねて許可書を確認すると、やはりというか…経営業務の管理責任者も専任技術者も辞任した代表取締役でした。また、息子さんには経営経験がなく、建設業に従事した経験もないとのこと。この時点で許可の更新は不可能であることが確定します。

更新が難しい以上、一度廃業届を提出し、再度要件をそろえて新規申請しか道はありません。一日も早い申請をすることでお客様のリスクを最小限に抑えることに頭を切り替えます。

とりあえず、登記申請をご自分でされるか司法書士に依頼するかで、お父様には再度取締役に就任していただく必要がある旨を伝えたところ、費用を抑えるために自分達でやった登記申請のせいで余計な出費が掛かったと肩を落とされていました。

良かれと思ってやったことが、結果的に許可を失効させ、登記申請費用や建設業許可申請の費用を余分に出費しなければならなくなってしまいました。

しかも新規許可申請から許可書の交付までには少なくとも2か月掛かります。

許可が下りるまで500万円以上の工事は受けられません。これでは笑えませんよね。

これはすべて実話です。

本日新規許可の申請が受理されたため、周知の必要があると思いブログに書き記すことにしました。

登記に関するスペシャリストであり、難関な国家試験を潜り抜けた司法書士ですら、職域が違うため建設業許可については見落とす方もいると聞きます。

もちろん私の周りには建設業者等許可が絡む法人の登記に際しては、念のために行政書士に確認するという方ばかりですが、専門家に作業を任せたからといって必ずしも安心とは限りません。まして、ご自分で登記申請をされるのであれば思わぬトラブルを招くことがあります。

この様な内容を書いたことで勘違いがあるといけません。ハッキリとお伝えしておきます。登記に関しては行政書士はプロではありません。しかし、建設業許可についてはプロです。

この記事で伝えたいことは、建設業者の仕事の基盤となる許可の取り扱いには十分に注意を払いましょう、ということです。

登記前に少しでも懸念がある際は建設業法のプロである行政書士にお問い合わせをお願いいたします。

当事務所は初回相談は無料です。

相談の際に必要なのは時間と労力ですが、これを惜しんだせいでより多くの犠牲を払う可能性があります。会社を守るためには手間を惜しまずに確認をお願いいたします。


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